1510年代にいわゆる 《木版画・作家・芸術》

キアロスクーロの素描から着想を得た多色刷り木版画が生まれ、17世紀初頭まで続く。

イタリアのウーゴ・ダ・カルピ、ドメニコ・ベッカフーミ、ドイツのクラナハ・父、ブルクマイヤ、オランダのヘンドリック・ホルツィウスらがこの技法による代表的な作家である。

木版画は16世紀末ごろから急速に衰退し、19世紀末にゴーギャン、ムンクによって復活するまでは、もっぱら民衆的画像表現の具として美術史の表面下に潜行した。

18世紀の末、イギリスのトマス・ビューイックが、木口木版wood-engravingにより動物などを題材とした独創的な作品を発表し注目された。

ツゲなどの硬質の木材の横断面にビュランで画像を彫るこの方法は、18世紀なかばにフランス人のミシェール・パピヨンによって開発された技法で、木版画と同じく凸版法で印刷する。

木口面の木材は概して小さいので、複数の木材の裏面をボルトで締めて大きな版面にする。

19世紀初めにウィリアム・ブレイクもこの方法を試みているが、その後一般には画家の下絵を専門の彫版職人が彫るようになり、ドーミエやギュスタブ・ドレの下絵による作品がとりわけ人気を博した。

ゴーギャンの『ノア・ノア』の連作・1893~95をはじめとする一群の木版画は、この技法の最大限の効果を発揮させたものといって過言ではなく、創作版画としての木版画の復活を促した。

ゴーギャンの例に触発されたムンクは、黒白対比を利した力強い作品を生み、キルヒナー、ヘッケル、シュミット・ロットルフら「ブリュッケ」のグループによる表現主義の木版画に大きな影響を与えた。

ムンクはまた、1枚の原版を分割してそれぞれにインキを施したのちにそれらを組み合わせて刷る、独創的な多色刷り木版画を考案した。

今日、版画芸術はかつてない隆盛を迎えており、その技法も実に多様であるが、木版画もその重要な一つである。

現代木版画の代表的作家としては、わが国の棟方志功と黒崎彰の名をあげることができよう。
update:2010年02月25日